ヒトはなぜ学問するのか
(バックナンバー 18)
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第18号 虚数iを学問する
2004.10.11
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USO SAKAI(ゆーえすおー さかい)です。
今月から月1回の配信とさせて頂くことになっておりましたが、時間配分の失敗
で、1週間+1日遅れの配信となりました。
次回からは予定通り……と決意するのですが、度々このようなこともあるかもし
れませんが、ご了承下さい。
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☆【??? 虚数iを学問する ?!∞】☆
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電験3種という電気関係の資格の受験勉強を始めて、「虚数」という概念の重要
性を思い知りました。
電気関係の理論は、「虚数」を使って表されているのです。
そして当然、「虚数」を使いこなせないと、試験もできないというわけです。
まあ一種の記号だと割り切って機械的に計算していってもいいわけですが、ちょ
っと突っ込んで理解してみよう、ということで、虚数を学んでみることに
したわけです。
虚数の本といえば、図書館の数学関係の棚に、この膨大な書籍が鎮座していまし
て驚きました。
虚数の情緒中学生からの全方位独学法 著者:吉田武 出版社:東海大学出版会 本体価格:4,300円 |
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虚数iの不思議数の生い立ちから複素数まで 著者:堀場芳数 出版社:講談社 本体価格:900円 |
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まず、高校で習った数の分類を復習してみましょう。
この世に存在する数は全て、複素数と言われております。
それを細かく分類すると、以下のようになります。
複素数
実数
有理数(整数、分数、有限小数、循環小数)
無理数
代数的無理数(√2、√3、……)
超越数(e、π、……)
虚数(純虚数)(−√2i、−3i、√2i、3i、……)
一般の複素数(1+2i、2−√3i、……)
私は高校時代、こういった数の分類を習って、複素数に対応するもう一つの数の
体系を考えられないか、と思ったものです。
今回読んでみた『虚数iの不思議』は、これらの数を歴史的過程を踏まえて順に
説明していき、そして最期に虚数についての詳しい説明に入ります。
虚数iとは、2乗して−1となる数。すなわち、−1の(正の)平方根。
√−1=iということです。
何でわざわざ2乗してマイナスとなる数を考えないといけないのか。
事実、古代ギリシア、古代インドでは
「負の数の平方根は存在しない」
とされていたそうです。
ところが、高次方程式の解の公式を使う際、√の中がマイナスとなる場合も出て
きます。
中学だったか高校だったかの数学で、判別式Dというのを習います。
初めて習う時、判別式Dが負の場合、「解はない」と習います。
ところがこの、判別式Dが負になった時も解を考えよう、というのが虚数の必然
性であります。
それで、この虚数を図形的に見る方法を考えたのが、ドイツの数学者ガウス。
ガウス平面、もしくは複素数平面の導入です。
まず、横(X)軸と縦(Y)軸の直交座標からなる4つの象限を持つグラフを考
えます。
共に実数の軸とすると、この平面上では、平面図形の位置を表せます。
これがデカルト座標であります。
そしてこのX軸を実数、Y軸を虚数の軸とすると、複素数を表すことができます。
これがガウス平面であります。
グラフがないのですが、ここまでは分かるでしょうか。
ここから急展開します。
まず、1という数を考えます。
これに−1をかけると、当然−1。
ガウス平面でいうと、(1、0)のY軸に対して対象な点は、(−1、0)とい
うことです。
また、1に虚数iをかけると、当然答えはiとなります。(1)
1×i=i
これをガウス平面上では、(0、i)としているわけです。
虚数iに、さらに虚数iをかけると、−1。(2)
i×i=−1。
(1)と(2)の過程をまとめると、以下のようになります。
1×i×i=1×(−1)=−1
すなわち、1に虚数iをかけていくと、ガウス平面上で
(1、0)、(0、1)、(−1、0)、(0、−1)、
すなわち反時計回りに90度ずつ循環するわけです。
そして、このガウス平面上に半径1の円を描きます。
その円周上の任意の点Zについて考えます。
Zから原点Oに線分を引いて下さい。
この線分とX軸のなす角を、θとします。
(X軸から反時計回りを正の方向とします)
そうすると、この円周上の点Zは、
Z=COSθ+iSINθ
と表せます。
(なぜならば、X座標=COSθ、Y座標=SINθ だから)
今までは半径1の単位円について考えましたが、円を任意の半径rの円とすると、
ガウス平面上で全ての点を表すことができます。
Z=r(COSθ+iSINθ)
こういった複素数の表し方を、「極形式」といいます。
ここら辺、自分で図を描いて確認して下さい。
デカルト座標のY軸を虚数軸としてガウス平面にすることで、図形と虚数を結び
つけることができました。
また、ガウス平面上に円を描くことで、複素数と三角関数を結びつけることがで
きました。
このように、共通点を抽象的に取り出して結びつけるのが、数学の面白いところ
であります。
そして、電気の理論では、三角関数と複素数が重要となってきます。
電験の受験では三角関数と複素数を使った計算が必要となってくるのであります。
ただ、電気の分野では、iは、電流を表すことになっております。
だから、iの代わりにjを使います。
この、数学の分野と電気の分野の表記の違いを統一するべきだ、と堀場芳数さん
は述べておられます。
「つまり、Z=a+jb、Z=r(COSθ+jSINθ)となることを筆者は希望
しています。」
私もそう思います。
さて、複素数の極形式を使った定理「ド・モアブルの定理」について。
(COSθ+iSINθ)のn乗=COSnθ+iSINnθ
証明もできるようですが、ここでは省略。
私どもの実生活でも実感できますが、n乗を計算するより、n倍を計算する方が
簡単ですね。
だからこそ、n乗がn倍に変わるこの公式の意義があります。
そして、指数関数・三角関数・虚数を結びつけた
オイラーの公式 exp(ix) = cos x + isin x ←exp(ix)とは、eの ix 乗のことです。
から、次の関係が導き出せます。
eのπi乗=−1
(exp(πi) =−1)
「無限小数eを、π(無限小数)乗して、さらにi乗したものが、−1ということです。」
この式、“人類の至宝"と呼ばれているそうです。
この辺につきましては、フリー百科事典『ウィキペディア (Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/
の「オイラーの等式」「オイラーの公式」「複素数」などの項目に詳しいです。
また、こんな本も出ています。
オイラーの贈物 著者:吉田武 出版社:筑摩書房 本体価格:1,500円 |
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さて、虚数iについて見てきました。
虚数iがX軸とY軸の2つの軸で表せるのであれば、軸をもう一本増やすことも
できるのではないか、
すなわち、平面座標でなく、空間座標で表せるような数の体系もあるのではないか、
と思います。
すると、本書の最後で堀場さんは述べておられました。
>>
ところが、複素数a+biに対して、a+bi+cjの形の数を「3元数」と呼
びます。これは、空間の点と1対1の対応になります。
さらに、次元をふやして「4元数」「5元数」、……「n元数」なども考えられ
ますが、実用的でないので、特殊な分野以外ではあまり使われません。
<<
ところで、我々人間を数値化すると、「n元数」で表せるのかもしれません。
身長、体重、年齢、年収、……などは、実態のある「実数」で表せます。
しかし、人間的な性格は、実態のある数値で表せません。
こういうデータこそ、大小を考えないという虚数を使って表せるのかもしれない
のであります。
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投票数:4票/コメント数:0件
協力:クリックアンケート http://clickenquete.com/
やっとイメージ通りの形式で書けた今回。
4票の投票を頂きました。ありがとうございます。
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☆【??? 電験ではこう出る ?!∞】☆
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電験3種試験で実際にどう出ているのかを見ていくコーナーです。
3種理論2000年問11(B問題)
図のような回路において、抵抗R2に流れる電流I2の値が5[A]であるとき、
次の(a)及び(b)に答えよ。
(回路図は省略します。ここでは問題解説を目的とするのではなく、電験3種試験
において虚数iがどんな風に使われているかイメージをザッと見て頂くことを目的
としております。)
(a)抵抗R1に流れる電流I[A]の値として、正しいのは次のうちどれか。ただ
し、I2を基準ベクトルとする。
(1)5+j5 (2)5−j5 (3)10+j5 (4)10+j10 (5)10−j10
直並列回路です。
交流電圧Vに、抵抗R1がつながれ、
さらにその先を抵抗R2とコイルXが並列接続されております。
だから抵抗R1に流れる電流Iは、抵抗R2とコイルXに流れる電流I1の和で
あります。
ここでは、コイルXに流れる電流I1が分からないので求める必要があります。
並列接続だから、コイルXにかかる電圧は、抵抗R2にかかる電圧と等しい。
よって、オームの法則より 5×10=50[V]
コイルXを流れる電流I1は、オームの法則より 電圧/リアクタンス
リアクタンスとは、交流電圧がコイルやコンデンサにかかった時、電流の流れを
妨げる成分。
コイルやコンデンサにおける抵抗のようなものです。
抵抗とリアクタンスを合わせて、インピーダンスと呼びます。
そしてこのリアクタンスが、虚数成分で表されるのであります。
よって、コイルのリアクタンスはj10と表され、計算されます。
コイルXに流れる電流I1は、オームの法則より
I1=50/j10=−j5
(このマイナス記号は、基準に対して遅れていることを意味します。
−jをかけているのだから、ガウス平面でいうと、Y軸の負の方向であります。
コイルの電流は抵抗の電流より90度遅れているわけです。)
よって、抵抗R1を流れる電流Iは、抵抗R2とコイルXを流れる電流の和だから
I=I2+I1=5−j5[A] よって、答は(2)
長くなったので問題(b)は省略しますが、この問題も虚数jの計算が入ってき
ます。
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